母ががんになった日から──「私」が私でいるために選んだ時間

2025.09.15

私が29歳のとき、母がステージⅣのがんだと診断されました。余命は2年。
まるで世界がグラリと揺れたような感覚。

 

私は、残された時間をできるだけ一緒に過ごしたいと考え、
できる限りのことを自分なりにやりました。

仕事量を減らし、毎朝保育園に子どもを送り、病院へ行き、
夕方はまた保育園へ迎えに行く

――そんな日々が続きました

次第に入院の日が増え
痛み止めの強さが変わっていく母の姿を見守るのは
言葉にできないほど辛かった

母が「母ではなくなっていく」ように見える瞬間に、胸が裂けそうになりました。
それでも「生きていてほしい」という気持ちは薄れることはなく
私のキャパシティはずっと限界を超えていました。

そんな中で、自分だけの小さな“息抜き”がありました。

月に1回。たった2時間のカラダを整える時間。美容院の時間。

誰かのためだけでなく
自分のために時間を使うことに
強い罪悪感がありました。

こんな時にって。

でも、その2時間があるからこそ
翌日また戻っていける自分がいました。

心がグチャグチャになりそうなときでも
その短い時間に自分のカラダと呼吸を取り戻し、
「私」でいられる感覚を取り戻せたのです。

母が亡くなってから10年が経ちますが
今でも病院へ行かなきゃと
飛び起きることがあります。

日常の些細な瞬間に過去の緊張が戻ってくることもあります。

それでも私は、あのとき自分を大切にする時間を許したことが
その時の自分を支えていると感じています。

もし今、誰かの看病や介護で自分の時間がないと感じているあなたへ。

自分のほんの少しの「息抜き」を、
決して罪だとは思わないでください。

それはわがままでも逃げでもありません

明日を生きるための大切な力です

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