私が29歳のとき、母がステージⅣのがんだと診断されました。余命は2年。
まるで世界がグラリと揺れたような感覚。

私は、残された時間をできるだけ一緒に過ごしたいと考え、
できる限りのことを自分なりにやりました。
仕事量を減らし、毎朝保育園に子どもを送り、病院へ行き、
夕方はまた保育園へ迎えに行く
――そんな日々が続きました
次第に入院の日が増え
痛み止めの強さが変わっていく母の姿を見守るのは
言葉にできないほど辛かった

母が「母ではなくなっていく」ように見える瞬間に、胸が裂けそうになりました。
それでも「生きていてほしい」という気持ちは薄れることはなく
私のキャパシティはずっと限界を超えていました。
そんな中で、自分だけの小さな“息抜き”がありました。

月に1回。たった2時間のカラダを整える時間。美容院の時間。
誰かのためだけでなく
自分のために時間を使うことに
強い罪悪感がありました。
こんな時にって。
でも、その2時間があるからこそ
翌日また戻っていける自分がいました。
心がグチャグチャになりそうなときでも
その短い時間に自分のカラダと呼吸を取り戻し、
「私」でいられる感覚を取り戻せたのです。

母が亡くなってから10年が経ちますが
今でも病院へ行かなきゃと
飛び起きることがあります。
日常の些細な瞬間に過去の緊張が戻ってくることもあります。
それでも私は、あのとき自分を大切にする時間を許したことが
その時の自分を支えていると感じています。
もし今、誰かの看病や介護で自分の時間がないと感じているあなたへ。
自分のほんの少しの「息抜き」を、
決して罪だとは思わないでください。
それはわがままでも逃げでもありません
明日を生きるための大切な力です

